常識の罠(新人原稿の受け入れ)


現在、全国規模で出版できる出版社の99%は新人の原稿を受け付けて
いません。


新人の出版希望者のほぼ全員は原稿を書き上げ、自信があったら気に
入った出版社の編集部に原稿を送ってプロの評価を受けようと思って
いると思います。


それは幻想なのです。
たしかに、戦前の日本はそうでした。
出版社の編集部ともなれば、新人が送りつけた原稿が机の上に山と
積まれ、これを編集部員が読み漁るようにして、目をつけた新人に
コンタクトして・・・ということが日常でした。


いま、それを行っているのは自費出版専門の出版社に限られます。
これが罠なのです。新聞紙面や有名雑誌などで、または電車の釣り広告
などで、新人原稿を募集してますという広告は自費出版専門の出版社に
限られます。または、全国で出版相談が開かれています。よし、ここに
原稿を持ち込もう、そしてプロの評価を受けよう、甘いですね、これは
自費出版専門の出版社の罠です。


現在、全国規模で出版できる出版社で新人の原稿を受け付ける唯一の
例外はコミックに限られます。いま、新人で売れる書籍は少女コミック
エロチックコミックなどのコミックに限られます。だから、コミック系
だけは唯一例外として新人の原稿を受け付けます。


原稿を受け付けるということは、原稿を募集するという解釈をするよう
では妄想が過ぎますね。出版社に原稿を送っても、郵便受付の部署で
開封もされずに返送されるということです。実際に出版社の窓口を訪問
しても原稿はその場で返却されてしまいます。当然ですが、編集部や
営業部などに案内などしてくれません。


その理由は差し障りがありますので詳しい説明はできませんが、現在の
出版社が新人を発掘する場合は、すべて出版社の事前調査で目星をつけ
た相手にコンタクトします。ところが、新人を発掘するという仕事は
たいへんリスキーです。


どこがリスキーかといえば、目星をつけた新人が本になる原稿を書ける
確率が低い点、発掘した新人の本が売れる確率が低い点、それらの新人
を探すためのコストが高い点などです。


プロ野球のスカウトに似てます。
リスキーな業務は外注されていますね。
新人スカウト専門の外注人材がたくさんいて、スカウトの専門家が
日夜新人発掘の調査をしています。そして、これはと思う相手には、
それとなくコンタクトします。手当たりがあれば球団に報告し、球団の
指示に従って折衝を深めていきます。


今日の日本の出版業界はジリ貧状態で縮小を続けています。
本離れが叫ばれて久しい感じですが、大手ではリストラが吹き荒れ、
弱小では倒産が相次いでます。そのようにして野に放たれた出版業界
のプロたちが相次いでいます。いま出版プロダクションやプロデュー
サーという起業が相次いでます。


つまり出版社にとって、最も経験が必要で、最も金のかかるリスキー
な部分となる新人発掘、だけど新人発掘ができないと将来的に必ず
衰退する最も重要な部分の外注化がひそかに始まってきたのです。


出版希望者の新人原稿を出版社と交渉できるのは、現在、私たち
プロデューサーしかいない現実を、まだ、ほとんどの出版希望者は
知らないのです。