自惚れの強い人たち


    出版というビジネスは一言でいえば出版社が著者に300万円
    の投資をするビジネスなのです。つまり、一冊の出版費用が
    300万円、原稿を頂戴し、これに手間隙かけて社運を賭けて
    磨き上げ書籍という商品化をします。当たれば儲けになります
    が外れば大赤字です。一冊の出版で喰ってける訳がないので
    何冊も出版します、そりゃぁ当たり外れがあるビジネスなので
    すが誰しもすべてを当てようと必死です。当たる原稿を探します。


    ですから出版業といえば、まるで水商売、さすらいのギャンブラー
    のようでもあり、芸能界に似たところがあります。タレントはただで
    有名になりません。売れるか売れないか将来が見えなくても、
    これを売ると決めたら売り出すために手間隙をかけます。
    そうなのです。先に投資から始まります。ようやく売れるように
    なったら、それからが回収です。誰が売れるのかわかりませんが、
    売れそうなのを探し出し、売れるように金をかけ、指導して育成して、
    積極的に売り出します。


    この実態を知らずして悪徳ライターに落ちぶれる志望者が増えて
    いるようです。私たちは、まず、志望者に対して出版審査を行い
    ます。つまり投資対象を見極める大切な手続きです。ところが
    自惚れの強い志望者は、踏ん反り返り、私の原稿を出させてやる
    のだからといきなり大先生のような言動に豹変します。まるで
    エクソシストで悪魔が乗りついたような状態になります。


    プロダクションが新人募集をかけます。
    明日のスターを探していますと宣伝広告を打ちます。
    それを見てきた志望者が、オーディションで大スターのような言動
    を取ればどうなるでしょう。追い出されますよね、狂人扱いされて。
    ところが、実に多いのです。無知、非常識とは怖いですね。


    出版業界の常識は知らないが世間の常識でいえば無礼だ、失礼
    だと悪魔付きになるのです。こちらは真面目に審査しているのです。
    その審査を受けていることが冷静に理解できないのです。オーディ
    ションの案内を受けたので私はスターなのだと舞い上がって冷静に
    なれない人たちが増えているのです。


    提出された原稿だけで判断できるほど今の出版界は甘くありません。
    タレント本などゴーストライターが書いたものが多いのは理解され
    るでしょう。最近はTVで報道され注目を浴びた人が書いたとされ
    るゴースト本まで増えています。もはや原稿は優れた出版関係者の
    手による商品化で完璧に化けるのです。著者となる実在する人物
    の商品化の時代に入ってきたのも実状なのです。


    著者のタレント化が深く進行しています。
    私たちは著者というタレントを探しています。
    ですから、審査は、原稿よりも、なぜ、このような原稿が誕生した
    のか、この後、どのような原稿が誕生するのか、つまりは、著者に
    商品価値があるのかどうかを審査するウエイトが急増しています。


    私は、OO文学賞で特賞を取った、2次審査にパスした・・・云々、
    それで先生ずらしたければ、どうぞ、他所へ行ってくださいです。
    私たちはオーディションをしているだけなのです。オーディションが
    理解できなければ他所へ行って欲しいのです。他の懸賞募集では
    このような手続きになってるが御社は違うので怪しい・・・、それな
    らば最初からオーディションに応募しなければいいでしょ。


    私たちは商品価値がある著者を探しています。
    そして商品価値を作れる著者を探しています。
    そのために審査します。審査はオーディションです。私たちが
    応募者を審査するのです。自惚れが強い、自分の価値観と自分の
    経験で自分に都合いいようにしか解釈できないお子様はご遠慮
    いただいた方がいいのです。


    出版したくて、審査に応募したのなら、出版業界の仕来りや私たち
    が実施する審査にまず応じていただくのが社会のルールじゃないで
    しょうか?